多数決で良いデザインは生まれない!
皆さんは「多数決」と聞いてどんなイメージをもっていますか?
おそらく大半の方は民主的、平等、みんなの意見を尊重、など良いイメージを持っていると思います。例えば「ロゴマークを作りたい。」という案件で考えてみます。沢山のデザインの中から社員全員で多数決をとって一番人気のものに決めよう!そうすればかっこいいロゴマーク間違いなし!と思っている方も多いと思いますし、そんな場面はデザインの現場ではよくあります。しかしそれは大きな間違いの始まりです。
多数決に隠された意図
そんな良いイメージの多数決ですが、なぜ間違いなのでしょうか?
デザインの現場において多数決という方法をとる時の表向きは上記で述べたように、民主的、平等、尊重などという言葉で飾られていますがその裏で下記のような状況が隠れています。
- 担当者が自分で方向性を決められない。(何がよいか分からないから人にゆだねる)
- 批判を恐れる(何かあったときの保険、「多数決で決めたから…」)
- 一番人気だから良いものに決まっている。
崩壊するデザイン意図
ロゴマークだけでなく、全てのデザインには形や色、場所に至るまで目的を達成するための意図があります。
例えばショッピングセンターのトイレのサインであれば目的はトイレに行きたいと思った時、たとえ離れた場所でも正確に位置を伝え、当然ですが、男性用か女性用か?一目で分かるようピクトグラムで分け、さらに色でより瞬時に見分けられるように考えられています。一見簡単なデザインですが、そこには年齢、性別、国籍をも考えられたデザインが詰まっています。
それはロゴマークも同じです。企業ロゴであれば会社の理念や商品を伝え、イベントロゴであればそれを見ただけでどんなイベントであるかターゲットへ直感的に伝える重要な目的があります。そんな重要な役割のロゴマークを目的を理解していない人びとにゆだねて良いのでしょうか?
全てとは言いませんが、そんな方法で選ばれ、色々な人の意見を反映していったデザインは「あたり障りない」「的外れ」「個人的な好き嫌い」なデザインに逆ブラッシュアップされ、結果、誰もが嫌いではないけれど誰にも響かないものになっていきます。
前述のトイレのサインで考えると、そのデザインの目的や本質を理解していない人達が「僕はこっちのデザインが格好いい!」「私はもっと可愛い形が好き♥」「色もコレが好きー♪」などと言い始めれば当然まとまるわけもなく、実際に使用してみるとトイレもどちらに入れば良いか分からないなんてことにも…。
まとめ
最後に多数決は間違いと言いましたが、その辺りを踏まえた上で使用する方法としては間違いでもなんでもありません。上記の事から理想的な方法はデザイナーや担当者が経験豊富で決定権があり、最終決定までリードしていき、その中で参考までに様々な人の意見を聞きながら進行していく。そんな方法で進んでいった案件は結果的にも優れたものになるのではないでしょうか。
グラフィックデザイナー / K.T