「禅」的なデザインとは? iPhoneのデザインを改めて考察
昨年、会社のバケーション制度*を利用し、福井県にある曹洞宗大本山永平寺にて、3泊4日の参禅研修に参加してきました。
禅といえば、Apple創業者のスティーブ・ジョブズが傾倒していたことでも有名です。ジョブズが生み出したiPhoneにも、禅の教えが投影されているといわれています。いまや世界的なシェアを誇り、スマートフォンの世界基準となったiPhone。禅的なデザインについて、今年発売から10周年を迎えたiPhoneを改めてみていきたいと思います。
*バケーション制度とは
マルキンアドが福利厚生として導入している、勤続年数に応じて取得できる休暇制度のこと。
無駄を削ぎ落とし、価値を最大化する
無駄を削ぎ落とし、徹底的にシンプルにすることが禅の美学といわれいます。
10年前ジョブズが発表したiPhoneは、巨大なタッチパネルとホームボタン1つのみという、従来の携帯電話の常識を覆すデザインでした。従来の携帯電話は固定されたキーボードが付いていることが常識でしたが、実はこの固定キーボードが問題。アプリによって最適なボタンの配置は異なるのに、ユーザーはすべての操作をキーボードを介さねばならず、しばしば使い方に混乱を招きました。
iPnoneは、マルチタッチ機能を搭載し、ほとんどの操作をガラス板1枚の上でできるようにしました。
素材に徹底的こだわる
固定キーボードが排除され、見た目も極めてシンプルなiPhoneですが、その佇まいは凛とした美しさがあります。
禅の修行僧が使用する食器で、応量器(おうりょうき)というものがあります。大きさの異なる5つの器が入れ子状に重なっており、材質は一般には黒塗りの漆器です。
食事はいのちをいただく大切な行い。禅宗におけるとても大切な修行のひとつです。応量器を用いた食事は、「食事ただそれだけに徹底的に向き合う」べく、厳格な作法が定められています。(詳細な作法についてはここでは割愛しますが、食事中の基本姿勢は坐禅、音をたててはいけません。咀嚼音もNGです。)応量器も食事に集中するべくデザインは非常にシンプルで収納性抜群。
また、禅僧は生涯マイ応量器だけを大切に使用するそうで、応量器は長持ちする漆塗り。生涯使えるように素材もこだわりが感じられます。(お釈迦さまの時代には金属製だったとか。)
iPhoneもモバイル端末として手に持ったときの質感やユーザーインターフェースなど、ディティールにこだわっていることが特徴。艶やかで滑らかな曲線美は応量器と通ずるものがあると感じられます。
まとめ
無駄を削ぎ落とし、徹底的にシンプルにすることで、「本当に大事なもの=本質」が浮き彫りになる。本質的なものはいつの時代も広く残っていくものだと思います。情報にあふれた時代、禅の精神をとりいれた「禅的なデザイン」はますます際立って残っていくのではないでしょうか。
WEBディレクター / H.E