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イラスト制作にきっと役立つ! 配色の話

はじめに

私たちが生きている世界で、なにか1色の色のみが単独で存在している状況に出会うことはなかなかありません。基本的には複数の色が組み合わさり、互いに影響し合いながら存在しています。この組み合わせのことを「配色」と言い、「こういう組み合わせは、このような効果を与えますよ」という代表的な配色にはそれぞれ名前がついています。イラストレーションを描く際は、色をうまくコントロールすることで、モチーフの魅力をさらに引き出し、イラストが受け手に与える印象を大きく変えることも可能です。
今回は、イラストを描く時にも役立つような、基本的な配色をいくつかまとめてみました。

ドミナントカラー

「Dominant」とは「支配的」という意味。その名の通り、同じ色合いでまとめ、色相を支配することで、調和の取れた統一感を与えることができます。デザインの中のイラストとして使う場合、企業のコーポレートカラーや商品のイメージカラー、イベントのテーマカラーなどをメインとして使うと効果的です。

ドミナントトーン

同じトーン(明度や彩度が近い色)でまとめた配色。ビビッドなトーンで揃えるとエネルギッシュで元気なイメージを、淡いトーンで揃えると優しい雰囲気を演出します。色味が違ってもトーンが揃っているので、カラフルで楽しい印象を与えながら、全体で見た時には統一感やまとまりを感じさせることが可能です。

トーナル

明度・彩度が低めの中間色でまとめた配色。トーンで揃えているので、1つ前に紹介したドミナントトーンの仲間です。グレイッシュなカラーは落ち着いた大人の印象を与え、穏やかでクラシカルなイメージ作りにぴったりです。

ウォームシェード/クールシェード

赤みを感じる色=ウォームシェードと、青みを感じる色=クールシェードでまとめた配色。同じ色味でも、それぞれちょっと違った印象を与えます。これは20世紀を代表する色彩学者フェイバー・ビレン氏の理論に基づいた色の分類法で、肌や瞳の色から個人に似合う色を診断するパーソナルカラーにも応用されており、「イエローベース」「ブルーベース」という言葉は耳馴染みがあるかもしれません。

ナチュラルハーモニー/コンプレックスハーモニー

「ナチュラルハーモニー」は、自然界の光の法則に則って、黄色系の色を明るく、青紫系の色を暗くした配色です。自然な調和が生まれ、安心感・親しみやすさを与えます。
それに対し、黄色系を暗く、青紫系を明るくする方法が「コンプレックスハーモニー」です。不自然で人工的な印象を与えますが、その違和感をうまく利用することで、個性的でモダンなイメージをインパクト強く打ち出すことができます。

セパレーション/アクセント

彩度や明度、色相が似ている色同士の間に別の色を入れ分割する配色が「セパレーション」です。それぞれの色を調和させたり、逆に対比を鮮明にすることができます。セパレーションカラーには、黒・白・グレーなどの無彩色を使うことで、もとの色の個性を消さずに洗練された印象を加えることができます。
「アクセント」は、似た色同士の中に、少量の対照的な差し色を加える方法です。単調な画面を引き締めメリハリを与えます。アクセントカラーは他の色と明度差や彩度差があるとさらに効果的です。

まとめ

今回まとめた配色方法は、一般的とされているものの中の一例であり、上記以外にもたくさんの手法や細かい分類があります。「色彩感覚」というと、生まれ持ったセンスや感性に因る先天的なものに思えてしまいますが、実は経験や知識によって後天的に学ぶところが大きいものです。好きな映画やアニメ、雑誌、絵画などで使われている色を真似てみることでも、自分の中の配色の引き出しを増やせるのではないでしょうか。 人間の目は(諸説ありますが)100万色以上の色を感じることができるらしく、無数にあるそれらの中から自力で色を選び取り、組み合わせを考え出すのは意外と難しい作業です。 今回ご紹介したような配色手法を知っていると、イラストレーションの色使いに悩んだり、いつも似た色使いで同じ印象になってしまう…と袋小路に入ってしまった時、突破口を見つけるための道標になってくれるかもしれません。

グラフィックデザイナー / S.M