パッケージのデザイン時にデザイナーが考えること
世の中に「ジャケ買い」「パケ買い」という言葉があるように、パッケージは商品の売れ行きを左右する大きな要素です。もちろん消費者は商品の質を期待して購入するのですが、店頭で消費者の心を掴むには、商品の顔であるパッケージの魅力は欠かせません。
パッケージデザインの手順や方法はデザイナーによって違うと思いますが、何をどう考えて制作を進めるのか、私の場合をお話しようと思います。
イメージを組み立てる
パッケージの仕事は、その商品について知ることが制作の第一歩です。
特徴は何か、どんな客層がターゲットなのか、既存商品のリニューアルなのか新商品なのか。商品をどう見せたいか/どう売りたいかという方向性をクライアントとデザイナーの間ですり合わせます。この段階で認識にギャップを残してしまうと、後々の作業がスムーズに進まない原因になります。
デザインをするうえで重要なポイントのひとつが「売り場はどこか?」ということです。
たとえば、チョコレートのパッケージデザインをするとします。スーパーのお菓子売り場に置かれるなら、たくさんのチョコ菓子と並べて陳列されたときに、他商品とは何が違うのか(糖質オフ、カカオ◯◯%、期間限定、など)を強調するのが効果的です。そもそもチョコレートコーナーに置かれるのであれば「チョコレート」という情報よりも商品の特徴やフレーバー名を大きく表示してもいいかもしれません。
一方、駅のお土産売り場や物産コーナーなどに置かれる場合。商品名や地名を明記することはもちろん、プレゼントするのが楽しみになるような魅力的なデザインであること、持ち帰るのに邪魔にならない形状・サイズであることがポイントです。お土産などのギフトは、普段の買い物以上に、渡す相手の家族構成やライフスタイルを考慮し選ぶツールです。売り場で買う人の先にいる人まで見越してデザインしなければなりません。
上記の他に、価格帯や今後シリーズ展開されるのか?なども踏まえデザインを詰めていきます。
制作するにあたり、類似商品のリサーチも行います。その際は、ネット検索だけではなく、実際にお店に行ってみることも大切です。陳列棚ではどんな商品が目立っているか、買いたくなるか。また、自分のデザインは売り場に並んだ時にどう見えるだろう?埋もれてしまわないか?などなど想像しつつ、いつも目にしている定番商品を改めて見ることで「こんな色を使っていたのか」「こういう材質だったんだ」と多くの発見があり、とても参考になります。
理想に近付ける
パッケージは立体物です。チラシやパンフレットなどとは違い、あらゆる方向からの見え方をデザインする必要があります。たとえば箱なら、何個も平積みにされた時の見え方なども検討します。ざっとデザインを作った段階で、一度実寸大で出力し組み立ててみます。パソコン画面上ではなく実際手にとることで、サイズやバランスの違和感を直感的に感じることができます。そのズレをデータで調整し、また検討。この繰り返しでデザインを理想に近付けます。制作に没頭しているとつい視野が狭くなりがちですが、自分の好みで判断せず、客観的な視点を持つよう心がけます。
まとめ
商品の作り手は、当たり前ですが商品について熱い思いを持っています。こだわった部分は余すところなく伝えたい!という思いから、たくさんの情報をパッケージに入れたくなりがちです。それがグラフィックにプラスに働く場合もありますが、結果として、伝えたいことが全てぼやけてしまうことにもなりかねません。クライアントが伝えたいことを整理しつつ、情報に優先順位をつけて、効果的に、そしてかっこよく画面に落とし込むのがデザイナーの役割です。
かといって、どんなに優れたパッケージであっても、商品の本質からかけ離れたデザインでは意味がありません。商品を置いてきぼりにした「私がステキだと思うパッケージ」は、ただのデザイナーのエゴになってしまいます。フォントや色使いの流行を取り入れることは悪いことではありませんが、その理由が「流行っているから」「可愛いと思うから」にならないように気をつけなければなりません。
パッケージの最終目的は、あくまでも商品を買ってもらうこと。作り手の思いをより多くの消費者に届けることです。そのことを忘れずデザインされたパッケージこそ、本当の意味で魅力的なのだと思います。
グラフィックデザイナー / S.M