WEBデザインはターゲットの絞り込みが重要!
なぜターゲットを絞り込む必要があるのか?
マーケティング関連の本を読むと、必ずといって良いほど書かれているターゲットの絞り込み。マーケティング的な見解から言うと、ターゲットを絞り込むことで、その層により最適化された広告展開が出来て、見込み客に、より自分事として捉えてもらい効果を高めることが出来る。また、限られた予算や時間を絞り込んだターゲットに集中させることが出来て、より効率的なマーケティングを行える。ザックリ言うとこんな感じでしょうか。
ではデザインを考えるうえでターゲットの絞り込みは、どう影響するのでしょうか。
デザインを考える前に先ずはターゲットの絞り込みの重要さを考えてみましょう。
ターゲットの絞り込みがなぜ重要なのか?
ターゲットを絞り込む上で、まず念頭に置くのが「自社商品(サービス)の強み」です。この強みにどんな価値を与え、どんな切り口で売っていくのか?そしてその価値を必要とするのは、どんなユーザー層になるのか?
そういったことを考えていくことで、自社商品をどんな訴求方法で誰に売っていけば良いのかが決まってきます。具体的に例を挙げて見てみましょう。
たとえば醤油専門店の場合
特徴例:江戸時代から続く歴史ある老舗。大量生産ではない手間のかかるこだわりの製法を採用している。卵かけご飯専用醤油など時代のニーズにあった醤油も作っている。
ターゲットを考える
手間のかかる製法を採用しているため、スーパーなどでよく売られている大量生産の醤油に比べると、風味は良いが単価は少々高くなります。こういった醤油に価値を感じ購入してくれるのはどういったひとたちでしょうか?
- 食に対する意識やこだわりが高く、醤油に対しても同様のこだわりを持っている。
- 料理を作ることを趣味として楽しんでいる。
- 飲食店の経営者(プロの料理人)
醤油というもの自体は様々な料理に使われ、日本では多くの家庭で常備されているポピュラーな調味料です。それだけにターゲットを考える際に「料理をする全ての人」あるいは「醤油を使う全ての人」をターゲットにしたい!と考える醤油専門店の方もいるかもしれません。確かにターゲットを広くすれば、それだけWEBサイトに来てくれる人も増えて、醤油もたくさん売れる!と考えるのも分かります。
しかしこの考えは間違いなんです。例えば子供のいる家庭を想像してみましょう。共働きで、子供が学校から帰って来たら、塾や習い事の送り向かえ。そんな時間のない中で、家で作る料理の買い物をして、家に帰って急いで食事の支度。味にもこだわりたいけど、日々使われる食材や調味料などは少しでも節約したい…。そういった方が醤油に求めるものは「こだわり」よりも「安さ」やどこでも買える「手軽さ」ではないでしょうか。そして「安さ」を求めるユーザーは単価の高いこだわり醤油ではなく、大量生産の安価な醤油を購入することが多いと思われます。
ターゲットを広げすぎることの何が間違いなのか?それは自社の強みにマッチしていない層までターゲットにしようとしているところです。この醤油店の強みは、江戸時代から続く老舗で、伝統の製法を受け継いでいる、こだわりの醤油を提供している部分です。「こたわり」ではなく「安さ」を求めているユーザーに、いくら訴求しても購入に結び付く可能性はかなり低いと言えます。Web広告などで、上手くWebサイトに流入させることができても、その先に結びつけるのは難しいと思います。
デザインにおいても重要なターゲットの絞り込み
デザインは設定したターゲットによって考えていく必要があります。
醤油に「こだわり」を求めるユーザーに向けたデザイン
「こだわり」を求めるユーザーに訴求する際には、どんなイメージが効果的でしょうか?日本古来からある調味料なので単語にして書き出してみるとこんな感じでしょうか。
伝統、歴史、こだわり、職人、厳選、天然醸造
使用する写真は、こだわりや老舗であることを訴求するのであれば、職人が醤油づくりをしているものや、創業当時の写真を使うのも良いでしょう。こだわりによる風味の良さを訴求するのであれば、高級寿司店のカウンターでお寿司に醤油をつけているところや、プロの料理人が使用しているシーンなども良いかもしれません。
色味は彩度を抑えた渋めのトーンで、醤油をイメージした赤みを帯びた黒をメインカラーに。書体は明朝系フォントや楷書などの筆文字も良いでしょう。全体的に伝統や歴史を感じさせるビジュアルに仕上げていきます。
醤油に「安さ」を求めるユーザーに向けたデザイン
それでは「安さ」を求めるユーザーにはどんなイメージが効果的でしょうか?
単語にして書き出してみるとこんな感じです。
安い、安心、手軽、家庭
使用する写真は、日々家庭で使われている必需品という意味合いから、家庭の朝食で使われているシーンなどを採用しアットホームな暖かい印象を持たせると良いのではないでしょうか。色味は食品ということもあり、食欲を掻き立てる暖色系。彩度もアットホームな雰囲気を大切にしたいので、やや高めが良いと思います。書体は明朝系も良いですが、楷書などの筆文字を使うと渋い印象になってしまうので注意が必要です。ちょっと細めの丸ゴシックもありかもしれません。
ターゲットを広げることは出来ないのか?
そんなことはありません!方法はありますが、ちょっと工夫が必要です。今までこだわり醤油を使ったことがない人に商品を知ってもらうきっかけが必要になります。この醤油店では「卵かけご飯専用醤油」も扱っています。元々家庭でポピュラーに食べられていた卵かけご飯ですが、最近では卵かけご飯専門のお店もあり、メディアでも取り上げられることが多く、更に人気が増しています。この人気の高い、卵かけご飯をきっかけに自社の商品を知ってもらうのです。
自社商品と相性の良い別のモノを取り上げ、それをきっかけに自社商品を知ってもらうと言うやり方です。これはこれで話が長くなりそうなので、詳細なやり方はまた別の機会に(笑)
まとめ
このように、「こだわり」と「安さ」の訴求ではデザインも大きく違ってきます。ターゲットを広げ、両方に訴求しようとして、デザインをミックスすると、デザイン的に中途半端なものになってしまい、結果的にどちらに対しても訴求力のないものになってしまいます。そもそも方向性の違うものをミックスすること自体に無理があります。
この醤油店の場合、自社の強みである「こだわり」の方向でターゲットを絞り、その層の人たちに、より確実に響くデザインを突き詰めていくことが、より良い結果を生み出していきます。
- 自社の強みを明確にする
- 自社の強みに価値を感じてくれるユーザーをターゲットにする
- ターゲットに響くデザインを考える
私がデザインを作り始める前にやっていることは、簡単に言うとこんな感じになります。
WEBデザイナー / I.H