電子書籍と紙書籍。メディア「本」のこれからを考える
みなさんは最近、本を読みましたか?
書籍の存在の仕方は、ここ数年のデジタル媒体の登場で急激に変化しています。タブレットで漫画を読んだり、スマホで雑誌を購読している方もいるのではないでしょうか。
今回は、身近なメディアである「本」について、改めて考えてみようと思います。
まず、それぞれの特徴をまとめてみました。
紙書籍の魅力
紙書籍ならではの魅力と言えば、
- 情報が記憶にとどまりやすい
- 電源やネット環境を必要としない
- 手に持った時の満足感がある
- コレクションすることで物理的欲求を満たしてくれる
などなど、たくさんの特色が挙げられます。
たとえば、編集者・松岡正剛氏が構想し、アートディレクター・杉浦康平氏がブックデザインを手がけた『全宇宙誌』という本。宇宙についての専門書ですが、アートブックとしてもマスターピース的大著です。
レビューサイト企画・制作に7年の歳月をかけた「空前絶後のブック・コスモス」と謳われるこの豪華本は、全面を黒で印刷し、文字や図版、散りばめられている星は白抜き。さらに小口(本の側面)に印刷された絵は開く向きによって柄が変わるというデザインで、印刷物であることに意味がある一冊です。
ここまで凝っていなくても、カバーがトレーシングペーパーで裏面に印刷がされていたり、カバーに穴を開けて下の絵を見せていたり、エンボス加工や箔押しがされていたり…、と、個性的なデザインの本が書店に多く並んでいます。
『全宇宙誌』は40年近く前に作られた本ですが、電子書籍が台頭してきた今だからこそ、「紙でしかできないことを」というコダワリのもと、ブックデザインが面白くなってきているように感じます。本棚に並んだ背表紙は、インテリアと言ってもいいかもしれません。情報を得るだけではなく、美しいオブジェとして機能するのも紙書籍の大きな魅力です。
電子書籍の魅力
デジタル媒体の魅力の一つは、何と言っても、かさばらないこと。
本や漫画は好きだけど本棚に空きがない、持ち歩くのが大変、というのは、本の虫としては悩みの種です。また、増えていく参考書に困っている学生さんもいるのではないでしょうか。そんなことで悩まず、好きなだけ本を購入できるのは大きなメリットです。さらに、
- 端末操作で画面の拡大や明るさ調整ができる
- 「読みたい!」と思ったときに場所や時間を選ばず商品をすぐ購入できる
- SNSとの相性がよく、自分のお気に入りなどをシェアしやすい
- 価格がリーズナブルである
なども嬉しい点です。
たとえば、『青空文庫』というサービス。ご存知の方も多いのではないでしょうか。
【専用ビューア「えあ草子・青空図書館」】
著作権が切れた小説を無料で公開している電子図書館で、web上で国内外の文学作品を手軽に読むことができます。アプリも開発されており、スマートフォンやPCからでも縦書きの文章を読むことが可能です。
読書を敬遠しがちな人が気軽に本に触れる機会が増えるのはもちろん、もともと本が好きな人こそ、電子書籍の活用でさらに読書の世界が広がるのかもれません。
まとめ
以上、両者の特徴を並べてみました。電子書籍と紙書籍、というテーマで話すとき、私たちは「やっぱり紙で読むべき」「これからは電子書籍が主流」といった、「紙媒体」対「デジタル媒体」のメディア枠争いの構図に陥りがちです。しかし、紙書籍と電子書籍は、対立するのではなく共生していくべきツールです。どちらかを選んで窮屈になってしまうのはもったいないと思うのです。
それぞれのメリット・デメリットを理解し、上手にいいとこ取りをするリテラシーを養う。そして、必要に応じて紙書籍と電子書籍を使い分ける。そうすれば、毎日の読書生活もより快適になるのではないでしょうか。
グラフィックデザイナー / S.M