目に見えない、たいせつなものをカタチに。
〜デザインの仕事とは〜
現在、デザインは問題解決の手段として社会での認知度を高め、私たちデザイナーは、的確なソリューションを提案することが求められています。それにはまず、その問題の「本質」を掴まなければなりません。デザインの職業に関わらず、物事の「本質」を見極めることが大事であるとよく言われますが、そもそも、「本質」とは何なのでしょうか?
「本質」とは
1. 物事の根本的な性質・要素。そのものの、本来の姿。
2. 哲学で、存在するものの基底・本性をなすもの。
英語では、Essence(本質・真髄・根本的要素)という意味になるそうです。本来の姿・本性とは、言い換えれば「目に見えていないもの」、視覚的に表出していない、隠れた「たいせつな何か」とも言えます。
「たいせつなことは、目に見えない…」
子供の頃に読んだ『星の王子さま』の一節を想い出しました。
「さようなら」王子さまは言った…
「さようなら」キツネが言った。
「じゃあ秘密を教えるよ。とてもかんたんなことだ。
ものごとはね、心で見なくてはよく見えない。
いちばんたいせつなことは、目に見えない」「いちばんたいせつなことは、目に見えない」
忘れないでいるために、王子さまは繰り返した。「きみのバラをかけがえのないものにしたのは、
きみが、バラのために費やした時間だったんだ」「ぼくが、バラのために費やした時間…」
忘れないでいるために、王子さまはくり返した。「人間たちは、こういう真理を忘れてしまった」キツネは言った。
「でも、きみは忘れちゃいけない。
きみは、なつかせたもの、絆を結んだものには、永遠に責任を持つんだ。
きみは、きみのバラに、責任がある…」「ぼくは、ぼくのバラに、責任がある…」
忘れないでいるために、王子さまはくり返した。出典:星の王子さま サン=テグジュペリ著
「本質」=「目に見えないたいせつなもの」
目に見えないけれど、心や気持ちといった「確かにそこにあるたいせつな何か」を想像することで、今見ているものが輝いて見えることもあるし、見えにくい領域にこそ、そこに「本質」が隠されていると言っているように感じます。
「目に見えないたいせつなもの」をカタチ(デザイン)でどう伝えるのか?
数十年の月日を越えてデザイナーになった自分に、子供の頃に読んだこの一節から「お前はたいせつなことがきちんと見えているか?」「そんな風にデザインの仕事と対峙し、責任を持っているか?」と言われているような気がしました。
私たちデザインの仕事では、打ち合わせの中で得られる、目に見えないお客様の“言葉”や“気持ち”にその問題の「本質」が隠されているように思います。その目に見えない“言葉”や“気持ち”の中にあるたいせつなものを(心で見て)正しく汲み取り、カタチにして社会に伝えることが職能と言えます。造形的に明快でありながらも、その奥にあるたいせつなことを伝えられるような魅力的なデザインが、明るい未来に向かった本物のソリューションとしてなり得ると思うのです。
「目に見えない、たいせつなものをカタチに。」
今、もう一度自分のデザインと向き合っていきたいと考えています。
クリエイティブディレクター・アートディレクター / O.H